第28回 約束(プロミス)エッセー大賞

過去の受賞作品

2023年
第28回入賞作品

プロミスお客様サービスプラザ賞

果たしたい約束が今ここに 林 愛結(18歳 高校生)

 「また絶対に来てね、約束だよ。」
 私は、春から保育の専門に行く。幼いときから保育士である母の姿を見てきたことや、母が働いている保育所の行事に参加したことから私も保育士になりたいと思うようになった。その夢は変わることなく高校生になった。
 高校2年生の時、専門のオープンキャンパスに行った。ここの専門には、保育所と児童養護施設が併設されていて見学できるようになっていた。私は児童養護施設を見学した。施設に入ると、子どもたちは凄く怖い顔で警戒しながら私のことを見てきた。暴言を言ってくる子もいた。私はどう関わっていいのか、どう声をかけたらいいのか分からず探り探りだったが、少しずつ打ち解けることができた。「施設にいる子供たちは親がいない、何かしらの理由で親と暮らせない子たちです。この子たちにとって施設は家です。そして私たちここで働いている職員は親のような存在です。」と働いている保育士さんたちが教えてくれた。保育士の資格を取ると児童養護施設でも働くことができると知り、夢が広がった。
 見学が終わり、子どもたちとお別れするときのことだった。私が一瞬にして養護施設で働こうと決心したのは。何も考ずに施設の子どもたちに「バイバイ!」と言った。すると、一人の女の子が言った。「バイバイって言わないで、イヤ」、「またねがいい、また絶対に来てね!約束だよ!」と。この瞬間、胸がギュッと締め付けられた。最初は警戒して話かけても応えてくれなかった女の子が、帰る時に初めて話をしてくれたことが嬉しかった。また、私のことを受け入れてくれた気がした。この子に言われた日から私は、絶対に保育士になってまずはあの子に会いに行くと自分の心に決めた。
 私の母は、私が保育士になりたいと決めたとき、「お金のことや兄弟のことは気にしなくていいから、まずは自分がしたいこと、行きたい道を選びなさい。」と言ってくれた。そして「その代わり絶対に資格を取って夢を叶えるんだよ、約束ね。」と言われた。このときの私はどれほど幸せ者だっただろう。私は三人兄弟の一番上で、まだ下には妹と弟もいるのに、決して裕福な家庭ではないのに母は絶対に私や妹、弟がしたいことがあると一番に応援してくれる。そんな母のためにも絶対に夢を叶えようと強く思った。また、やりたいことを何でも出来る環境をあたりまえだと思わず、常に周りの人、家族に感謝をしようと改めて思うことができた。
 何かあれば「約束」「約束だよ、絶対に。」と言う。今までどれだけの約束をして、どれだけの約束を守れたかなんて覚えていない。けれど、女の子と交わした約束、母との約束だけは絶対に守りたい、いや、守る!と強く自分に誓った。「簡単に約束なんてするな」「約束したってどうせ」と思う人もいるかもしれない。じゃあ、誰からもそう思われないように自分自身もそう思うことがないように、どんな手段を使ってでも約束を守ってやると私は思う。「時間も周りの人も環境も何だって使って、自分の夢と約束を果たすための材料にしてしまえ!」今、18歳の私が思う素直な気持ちだ。約束が果たせるかな?大丈夫かな?なんてマイナスなことは絶対に考えない。夢がある限り、約束がある限り。
 一番大事なのは、約束が果たせるか果たせないかよりも、約束を果たすための努力を自分がどれだけするか、できるかだと思う。
 「将来、保育士になる」という母と交わした約束、あのとき女の子と交わした約束。さあ!約束を果たすための努力をすることを今、自分自身と約束しよう。
 待っててね。私に夢をくれた女の子。胸を張って「おまたせ!」と会いに行くその日まで。