第28回 約束(プロミス)エッセー大賞

過去の受賞作品

2014年
第19回入賞作品

中学・高校生特別賞

「曾おばあちゃんの約束」 鈴木 花梨(13歳 学生)

 新しい年を迎え、今年も曾おばあちゃんの家へ新年の挨拶に行った。相変わらず元気で、たくさん話をした。こうやって、曾おばあちゃんと話をするのも楽しみの一つだが、もう一つの楽しみは、なんといっても、お年玉がもらえるということだ。
 毎年、お年玉をもらいながら、必ず言われることがある。
「がんばっとるかね、大きいおばあちゃんも、あんたたちが大学生になるまでは、生きとって、お年玉や大学の入学祝まではちゃんとやらなあかんでな。元気でおるわな。」
と、曾おばあちゃんとの約束だ。みんなに
 「あと五、六年は大丈夫だろうね、まだまだしっかりしてるし。」
という会話が毎回繰り広げられる。
 しかし、今年はそこには、曾おじいちゃんの姿がなかった。最近、足腰が弱り大好きな散歩にも行けず、一日の大半をベットで寝て過ごしているそうだ。食事はしっかりとっているようだが、一番トイレが大変で、一人で行こうとすると転んでしまって、骨折をしたり、擦り傷を作ったりするらしい。だから、曾おばあちゃんが曾おじいちゃんのお世話をしているのだという。あんな小さな体で大変だろうな、と思った。
 毎日毎日、曾おじいちゃんのお世話をしているから、曾おばあちゃんの腰が悲鳴を上げているそうで、夜もろくに眠れない。
 こんな話を、八十六歳になる曾おばあちゃんと、六十四歳になる私のおばあちゃんが、話している。それを見ている私と妹に、お母さんが言った。
「高齢者と年寄りが年寄りの世話をどうしたらいいか話してるんだよ。大変なのが分かる?これが日本のいたるところで問題になっていて、年寄りが年寄りの面倒を見ていかなくちゃいけない時代になっているんだよ。よく見て覚えときなよ、いずれお母さんたちもそうなるんだからね。」
と、言った。
 高齢者問題を目の前で見て、深刻な問題だと、初めて感じた。このまま、曾おばあちゃんが曾おじいちゃんの世話を続けていたら、確実に曾おばあちゃんが倒れてしまうと思った。私が大学生まで生きる約束が守れなくなってしまう。なんとかしてあげられないのかなと思った。心配になった。
 結局、おばあちゃんと曾おばあちゃん、親戚の人と相談してこのままでは、曾おばあちゃんが大変なので老人ホームに曾おじいちゃんを預けることになった。
 少しさみしいことだけど、家族の負担を考えると、仕方が無いのだと思った。
 こころなしか、今年の曾おばあちゃんが小さく見え、本当に私が大学生になるまで、いや、社会人になるまで、元気でいて欲しいと思った。
 そうしたら、今度は私が曾おばあちゃんにお年玉をあげることができる年齢になり、今よりも何かしてあげることができるから。
 約束します。
だから、ずっと元気でいてください。