第24回 約束(プロミス)エッセー大賞

過去の受賞作品

2016年
第21回入賞作品

中学・高校生特別賞

おばあちゃんとの約束 池上 美来(17歳 高校生)

 編む、編む、編む…。毛糸の色を変えてまた編む、編む、編む…。約束したのだ。笑顔が素敵な友達と。赤色のマフラーをプレゼントするという約束を。
 私にはたくさんの趣味がある。そのうちの一つが編み物だ。編んでいるときは、出来上がりの作品を頭に浮べる。友達はどんな反応をするのかな? 喜んでくれるかな? 勝手な妄想が次々に頭を駆け巡る。編み物にはそんな思いを楽しむことのできる魅力がある。
 編み物を始めたのはつい最近。おばあちゃんがやっているのを小さい頃から見てきた。いつかは私も…と思い、高校生になってやっと挑戦ができた。まず初めは自分用のマフラーから。今回使うのはかぎ針だ。慣れない手つきで一編み一編み編んでいく…。するとすかさずおばあちゃんが「違う!違う! なんでこんなとこに編んでんの? さっきここに編めって言ったら?」と笑いながら言った。私は「ああ、了解、了解」と返事をしながらまた違った場所に編んでいく…。そしておばあちゃんの笑い声が部屋に響く。そんなやり取りを繰り返してやっと出来上がった。それは白一色で編んだシンプルなマフラー。所々隙間が空いていて、なんだか少し不格好。それでも私は満足だった。学校へ行くときも出掛ける時もマフラーは私の首元に巻きついて温めてくれる。私のお気に入りとなったのだ。今では私も慣れた手つきで編めるようになった。おばあちゃんにはまだほど遠いけど。
 先日、親しい友達が私の白いマフラーを見て、「私にも作ってよ!」と声を掛けてきた。私は頼まれたことが嬉しくて、「どんなのがいい?」と聞き返した。
 家に帰って早速準備。友達は赤い色のマフラーが希望だ。必要なものは…かぎ針と赤色の毛糸、それから…。友達の好きそうな色合いを考えて青色の毛糸もアクセントとして追加。ボタンがついていたら可愛いかも!ビーズなんてどうかな? 時々一人言をつぶやきながら編んでいった。赤色の毛糸は次第に形を変え、マフラーの姿へと変身していった。青色の毛糸は両側の側面に沿って長く一連に。仕上げにボタンを五つ、星形のビーズ十個を交互にマフラーを横断するように縫っていく。完成したマフラーは私の白いマフラーよりずっと幅が広くてずっしり重かった。おばあちゃんも絶賛するほどのものとなった。
 後日、友達に渡した。「こんなに可愛いマフラー、貰っていいの! 嬉しい!」と、私の想像を超えた反応をしてくれた。そして素敵な笑顔で、「ありがとう。」と言った。その魔法のような言葉がたちまち私を嬉しくさせる。そしてまた誰かと約束をしたいという気持ちにさせる。この魔法はこれから先も解かれることはないだろうなと思った。
 学校から帰っておばあちゃんに話をすると、「頑張ってよかったな!」と言ってくれた。おばあちゃんはその言葉の後に、「今度はおばあちゃんのも作ってくれん?」とぼそっとつぶやいた。私は一瞬、今まで編み物を教わってきたおばあちゃんに作るのか…。何だかプレッシャーだなと思った。でも、もしかしたら"私が" 編んだマフラーが欲しくなったのかな、とも思った。編み方はおばあちゃんに比べたらまだまだ下手くそだし、おばあちゃんが編んだ方が絶対完成度が高い。それでも私に編んでほしいと言う。きっとそれは孫である私がおばあちゃんのためにと思って一編み一編み編むことがおばあちゃんにとっては魔法にかかったように嬉しいことなのかなと思った。私は、おばあちゃんに「了解、了解」と言った。それからおばあちゃんに似合いそうな色を頭で想像する…。
 編む…編む…編む…。喜ぶおばあちゃんの顔を思い浮かべて一編み一編み丁寧に。編み物は私たちを嬉しくさせる魔法をかけてくれる。それは人を幸せな気持ちにするのだ。私はその魔法の虜だ。だからこの先もきっと私はこの魔法にかかったままだ。