第24回 約束(プロミス)エッセー大賞

過去の受賞作品

2019年
第24回入賞作品

10代の約束賞

月と太陽 沖野 彩華(18歳 高校生)

 私は月だ。太陽に照らされていないと自らは光ることはできない。だから、いつか太陽になりたいと思っている。
 私がこれからここに記すことは、最初で最後にする話だ。今まで、誰にも話していないわけでもないが、詳細を話したことはおそらく今までない、そしてこれからも。
 中学生の時、私は友人関係があまりうまくいかなかった。最初は多くの友人ができ、充実した生活を送っていた。しかし、部活動で出会った友人たちと悪ふざけをしているうちに、それは私へのいじめとなっていった。
 私も友人も遊びだと思っていた。私が笑っているだけで「いやだ、やめて」という言葉を言わなかったから、私も悪かったのだ。しかし、明らかに周りからは遊びではなくいじめのように見えていた。
 毎日、部活動に必ず寄る場所があった。そこは駐車場で、人目に付きにくい場所だった。 そこで毎日暴力的なものを受けていた。最初はちょっかい程度だったが、だんだんとヒートアップしていき、毎日必ずされていた。ひどい時は、一時間近くされていたこともある。
 次第に部活動の全員のメンバーにボールをぶつけられたり、こかされたりといった行為が広まっていった。一番辛かったのは、練習試合等で車移動するときに、会場に着くまでどれだけ時間がかかっても、顔を座席の下にうずめられるという行為だった。その間も髪を引っ張られたり、暴力的なものもされる。息もしづらく、今でもあの時のことがよみがえるとどうしても恐ろしくなる。
 学校で先生に呼び出されたとき、私は先生に「大したことじゃないです。だから、親に言わないでください。心配すると思うんで。」と言った。すると先生は私の目の前で泣き出した。「これは立派ないじめだ。大問題だよ。親にも言う、あんたを助ける。」と先生に言われた。その瞬間突然わけのわからない涙がこぼれ止まらなくなった。おそらくもう限界だったのだろう。
 ここからいろんなことがあった。精神的に安定せず、ストレスを感じれば過呼吸になり不眠症でまともに授業すら受けられなくなった。でもいつもそばにいてくれる先生がいた。
 私はそれから約一年かけ苦難を乗りこえた。志望校にも受かり、夢を見つけ新たなスタートを切った。
 卒業式の日、先生にお礼を言い、そして握手をしながら心の中で約束した。「(必ず夢を叶えて、立派な太陽になります。私が救われたように誰かを救う太陽になります)」
 言葉にするのは恥ずかしく言えなかった。しかし、私は高校ではもっと活発に、もっと先生のような太陽のような存在になりたいと強く思った。
 今の私を中学時代の先生方や友人に見られたら驚くだろう。今の私は別人だ。性格を変えたわけではない。自分らしく、夢に向かって生きているだけだ。夢といっても、残念ながら教員になるわけではない。私の夢はミュージカル俳優だ。もちろん、教員にもなりたいと思ったこともある。だが、それ以上に心を奪われ、この道で誰かの太陽になりたいと思った。
 もちろん簡単な道ではない。だが、その夢を目指してから私の人生は大きく変わった。ある人に「変わったね、楽しそうだね。」ある人には「なんでそんなに楽しそうに笑うの?幸せなんだね。うらやましい。」と言われたことがある。確かに幸せだ。今が本当に楽しすぎる人生だ。くよくよなんて考えない。考える暇があるなら顔をあげて一歩でも前に進みたい。
 明るい自分がいるのは、太陽のように光を照らし続けてくれた先生がいたからだ。私は本当に感謝している。だが、今の私は太陽にはなれていない。まだまだ先生みたいな光を放ってはいない。けれど、これから長い人生でなっていきたい。今度は私が誰かの太陽に。