第25回 約束(プロミス)エッセー大賞

過去の受賞作品

2020年
第25回入賞作品

10代の約束賞

自立への道 関 啓佑(14歳 中学生)

 四時五十分。辺りがまだ暗いこの時間に僕の家の中ではアラームが鳴り響く。僕がそんな朝を迎えるようになったのは一カ月前からだ。
 一カ月前のある日。僕はいつものように七時に「起きろ」と言う母の語勢の強さにおどろきながら、逃げるようにベッドをはなれ、ねむい目をこすりながら登校時間ぎりぎりに学校へ行っていた。
 その日の夜、僕はたわいもないことをきっかけに母とけんかをしてしまった。たいしたことではなかったが、僕が余計なことを言ったせいで母をおこらせてしまった。本気になった母は僕に、「生意気なことを言うのは自立してからにしろ。」とものすごいけんまくでそう言った。おそらく、勢いあまって出た言葉だったのだろうが、僕の胸にはその言葉がつきささってきた。思いかえしてみれば、僕の生活はとても胸をはれるものではなかったのだ。
 そこで、自立を目指してまず早起きをしようと決意した。具体的には、五時に起きる母よりも早く起きること。心の中でそう誓った。何事も三日坊主で終わってしまっていた僕だったが、母に勝ちたい、と妙に張り合っていたためか、なれない早起きも、毎日続けられた。
 一週間もすると、母からは「どうしたの、何か変なものでも食べた?」と言われた。やはり母は、本気で自立してほしいと思ってなかったのだろう。あるいは早起きを自立だと思っていなかったのか。まあ、確かに母に勝とうと意気込んでいたため、競争に近いか。そう自分の中で納得した。
 そんなことはさておき、僕は一人で起きられるようになり、生活リズムも整ってきた。母と張り合おうとしなくても自然と起きられるようになったことで、気持ちの余裕もできた。早起きよりも、そうすることでうまれる時間に価値をみいだせたのだ。逆に今まで何のために早起きしていたのかを考えると少し自分にあきれる。
 早起きは三文の得と言うが、あながち間違ってない。なにせ、学校に行くまでに、二時間も自分の時間がうまれるのだ。時間にせまられる、せわしない朝とは比較するまでもない。そんな余裕ある朝を迎えるようになってから、日中に活力がみなぎるようになった。別に、睡眠時間が増えたわけではない。おそらく、せわしない朝は活力をうばってしまうのだろう。
 何はともあれ、早起きをする、という自分との約束を果たしたことで、早起きの有効性を知ることができた僕だったが、まだ自立にはほど遠い。母は僕の気付かないところで家事をしている。おもわぬきっかけで振り返ってみた自分の生活だったが、下を見れば必ず母の存在がある。
 僕はあと何年で自立しなければいけないのだろう。そう考えると、早起きくらいで一喜一憂してられない。まだ、進路について、具体的に決めていないが、気付けば来年は受験生だ。高校での生活はもっとあっという間なんだろうな。
 今日も僕はアラームをとめ、母より先に床を出る。今日は何をしよう。僕の自立への道は始まったばかりだ。