第25回 約束(プロミス)エッセー大賞

過去の受賞作品

2020年
第25回入賞作品

10代の約束賞

彼 山浅 龍之介(16歳 高校生)

 あの子とした約束は、もう果たせない。
「いつか大きな舞台でまた会おう、約束な。」
小学校を卒業する時に交わした約束だった。
 彼とは、幼い頃から仲が良くてよく一緒に遊んだ。負けず嫌いで、負けるとすぐに泣くし、すぐに怒る。でも優しくて、とにかく一緒にいて楽しい奴だった。彼は柔道、私は野球、やっているスポーツはそれぞれ違ったけれど、一緒に夢を語り合えるようなそんな仲だった。彼とは、たくさん笑ったし、二人でめちゃくちゃに怒られることもあった。
 そんな私たちも小学校六年生、もうすぐ中学生になるという時、私は夢に向かって進むために、秋田県から宮城県の中学校に転校することが決まった。どうしても入りたい憧れのチームがあったからだ。一人も友人がいない、知り合いもいない、不安や怖さはあったが夢に向かって進むという信念に決意に迷いはなかった。もちろん、行くことが決まってから、すぐにそのことを伝えた。
「俺、中学校からは宮城で野球することにしたんだ、だから、中学からは転校することになるんだ。」
「本当か、頑張れよ。先行かれちゃったなぁ、俺もすぐに追いつくからな、越されないようにしっかり練習しとけよ!」
 いつも通りだった。負けず嫌いなのは知っていたし、本当はどう思っていたのかは知らないが、彼の表情からは決意がひしひしと伝わってきた。
「いつか大きな舞台でまた会おう、約束な」その約束と夢を持って私は、宮城県の中学校へと進学した。
 新しい場所での生活は思った以上に大変だった。誰一人として知り合いのいない学校で、友人を作ることから始めて、知らないことだらけの生活を家族と一日一日勉強しながら暮らしていった。友人関係も、野球も、なにもかも上手くいかず、
「このまま家族に迷惑を掛け続けるのなら、もう地元に帰った方がいいんじゃないか。」
「もう逃げたい。」
「辛い。」
 そんな時、私を踏み止めてくれたのは、彼との約束だった。
「夢に向かって苦しんでいるのは俺だけじゃないんだ、自分で進んだこの道、逃げるわけにはいかない。」
 私の戦う理由の一つだった。
 そこからの三年間はあっという間に過ぎていった。良い事も悪い事もたくさんあったが、最高の中学生活三年間になった。
 ステージは高校に変わり、また一から進んでいこうと思った。
 しかし、それは突然だった。
 両親からの急な電話でその事を知った。
 「〇〇くんが亡くなっちゃった。しかも、自殺で。いじめられて、柔道も上手くいかなくて、昨日亡くなったって。」
 それは彼の名前だった。将来や、夢を語り合った、彼の名前だった。
 言葉が出なかった。
「約束したのに、辛くても頑張ろうって約束したのに。」
 何もできなかった自分が本当に嫌になった。一人でずっと苦しんでいたのだろう。自分の事で精一杯だったとはいえ、連絡の一つもできなかった。メールの一つでもできたら、何か変わったのではないか。自分を責めた。
「もう同じ約束は果たせない。あいつの分まで戦って、大きな夢を、舞台を見せてやるよ。」
 今、私は高校野球で夢を、目標を掴むために戦っている。まだまだ弱くて、何もできない。でも、その現実に立ち向かい続ける。
 もう一人の夢ではない。戦う理由がそこにはある。チームメイト、家族、支えてくれた全ての人、そして彼との約束を守るために。