第30回 約束(プロミス)エッセー大賞

受賞作品

2025年
第30回入賞作品

10代の約束賞

スーパーカメレオンキャンデー 任 青語(15歳 中学生)

 電車の中で一つのアメをなめる。なめた間に口に広がるコーラの味がたまらなく美味しいのだ。少し不格好な見た目も、サイズが大きくてなめにくい所も今では魅力的に見える。このアメを食べていると、脳裏に幼馴染のYちゃんが顔を出す。
 私とYちゃんは幼稚園からの知り合いで幼稚園でできた初めての友達だ。私とYちゃんは同じ年中さんからの転入生で、互いに話してすぐに意気投合した。彼女はいつもポケットに大量のアメを入れていて、口いっぱいにアメを頬張る所はハムスターのようでなんだか愛おしい。私はそんな愛らしい姿も、茶色に澄んでいる目も、優しく友達思いな所も大好きだった。年長さんになったある日、彼女は私を駄菓子屋へ連れて行った。「ヒミツのバショだから他の子に言っちゃだめだよ?」とニヤニヤしながら私の手を引く姿はなんだかいつもの穏やかな雰囲気とは違ったヤンチャな女子に見えた。駄菓子屋はどうも駅前にあるようで、駅の改札を出て十分ほど歩くとポツンとした一軒家があった。屋根の塗装は剝がれていて、看板の駄菓子という文字も消えかかっている。こんな所に駄菓子屋があったのかと、店の前で立ち尽くしていると、先に店に入ったYちゃんがドアの隙間から顔を出して、私を手招く。(はやくして!)と言いたげな表情だ。
 いざ入ってみると、そこはキラキラ輝く宝石箱のような所だった。見たことのないお菓子が壁全体をおおっている。その中で一つのお菓子が目に入る。„スーパーカメレオンキャンデー"パッケージにでかでかとカメレオンが描かれている。アメの外側がコーラ味で中はフルーツ味のアメらしい。「それぇ一番人気だょぉ。」しゃがれた声が私の耳に響く。Yちゃんは私とおばあちゃんの会話を無視して、カゴいっぱいに駄菓子をつめこんで嬉しそうだ。私はスーパーカメレオンキャンデーを一つ、うまい棒やポテチを適当にカゴに入れた。店を出た後、ベンチで買った物をYちゃんと一つ交換することになった。『せぇーの!』という声と同時に、キラッと青色のラベルが光った。私もYちゃんもスーパーカメレオンキャンデーを手に持っていたのだ。「いっしょだね!」と言いながら私とアメを交換する。
 「これは私たちの友達のしるし。離れていても、このアメが繋いでくれるんだよ!約束だよ。」と指切りげんましたことを今でも覚えている。
 その後、私とYちゃんは別々の学校へ行き、私は引っ越ししてしまったので、Yちゃんとはそれっきりになってしまった。新しい生活も楽しかったが、Yちゃんが居ない生活はなんだか物足りない。またYちゃんと会えるかもと駄菓子屋へ何回か訪れたが、彼女に会うことはできなかった。もうYちゃんとは会えないのではないかと不安になった。そんな時に私はスーパーカメレオンキャンデーをなめる。彼女も私と同じようにしていると願っている。あの時、約束したから。
 そんなことを思いながら電車にゆられる。「すみませんっ」と同級生ぐらいの子に声をかけられた。茶色できれいな目が私を見つめる。パリッとアメが割れた音がした。