第30回 約束(プロミス)エッセー大賞

受賞作品

2025年
第30回入賞作品

10代の約束賞

大切な約束 藤井 優羽(18歳 高校生)

 私には、支えになっている「推し」がいる。彼はいつも明るく、まっすぐに夢を追いかけている。その姿を見るだけで、不思議と自分も頑張ろうという気持ちになれる。どんなに疲れた日でも、彼の声や笑顔を見れば心が軽くなる。私にとって彼は、遠いけど確かにそばにいる存在だ。
 ある日、配信の最後に彼が言った。「いつか会おうね。」その言葉を聞いた瞬間、胸が熱くなった。それはリスナー全員に向けられた言葉だろう、でもその瞬間まるで自分だけに言われたような気がして、涙がこぼれそうになった。画面越しでも彼の優しさと本気が伝わってきた。「いつか会おうね。」その言葉が、私にとって大切な約束になった。
 いつになるのかもわからないし、本当に会えるのかもわからない。それでも「その日まで頑張ろう」と思える力をくれた。彼が努力を続けているように、私も少しずつ前に進みたい。
 まず私はアルバイトを始めた。ライブやイベントに行くための費用を、自分の力で貯めたいと思ったからだ。最初は慣れない仕事で失敗ばかり。注意されて落ち込む日もあった。でも、そんな時こそ「いつか会おうね」という言葉を思い出す。彼はきっと、私が弱音を吐かずに頑張っていることを応援してくれている。そう思うと、もう少しだけ踏ん張れた。彼が夢を叶えるために努力しているように、私も「彼に似合う自分」になるために頑張りたかった。
 そしてもう一つ、挑戦したことがある。それは、ヘアアレンジだ。私は昔から不器用で髪をまとめるのが苦手だった。でも、もし彼に会える日が来たら、そのときは少しでも可愛い自分でいたいと思った。最初はうまくいかずに何度も鏡の前でため息をついた。それでも「あの言葉」を思い出すともう一度、やり直す気持ちになれた。少しずつ練習を重ねるうちに、前よりもうまくできるようになっていくのが嬉しかった。努力して変わることは、心にも自信をくれる。
 この約束の不思議なところは、彼が私の存在を知らなくても確かに「私との約束」として、私の心に生きていることだ。沢山のリスナーに向けての言葉のはずなのに、私にとっては特別な一言になった。落ち込んだ時や、頑張る気力がなくなったとき、私は心の中でその言葉を繰り返すようにしている。
 「いつか会おうね。」それだけで、もう少し前を向ける。
 約束とは、必ずしも誰かと直接交わすものだけではないと私は思う。たとえ一方的でも、その言葉を信じて努力し続けることができるなら、それは立派な約束だ。彼の言葉を胸に、私は少しずつ変わっていく。前よりも明るく、少しだけ強くなれた気がする。
 いつか本当に彼に会える日が来たら、私は笑顔で伝えたい。
 「あの約束を信じて、ここまで頑張れたよ」と。そのために、私は今日もバイトを頑張り鏡の前で髪を整える。いつになるかわからない「その時」を信じて。
 だって私は、あの日交わした「約束」をずっと心に抱いているから。